読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

思い残すことなど

拝啓 見知らぬあなたへ

1月12日の駄文

いつも通りよく晴れた1日だ。病室には午後から陽がよく差し込む。ぽかぽかと暖かく、まるで春が勘違いしてやってきたみたいに感じる。でもそれは気のせいで、外に出るとちゃんと真冬の気温をしている。

秋に入院したのに真冬になってしまった。二ヶ月の予定が四ヶ月半の予定に延びた。自分の側に原因と環境的な事情があるから仕方ないなと思う。それでもやはりかなしい。

これだけ長く入院していると、家にいるより病院にいる自分の方を自然なものとして受け取ってしまう。外泊で家に一時帰宅などすると、あまりの所在の無さに愕然とするものである。それはとても寂しい体験だ。犬やインコや夫でさえも、距離感を掴み損なってしまう。どう接してたっけ? どうやって話してたっけ? そんなことがうまくわからず、ぎくしゃくして、結局無言のまま時間が過ぎてしまったりする。

海が見たいなあと思う。大桟橋からみなとみらいを眺めてもいいし、三浦半島で命の色をした夕焼けを眺めるのでもいいし、なんだって構わないから海へ行きたい。きっと今どうしようもない気持ちでいるのかもしれない。

どうやってこの先生きていけばいいのかなと考える。良策は何も思い浮かばない。ただ漠然と過ぎる日々だ。
ただ淡々と過ぎていく日々は、しかしそれでいて美しいものである。それはあらゆる人の不断の努力で成り立つものだからだ。思わずついてでるはずのため息すらも忘れ、その日々をじっと眺めていたい気分になる。

もう2度と会えない人のことを思い出す。それは喧嘩したとか、もう死んでしまったとか、そういうことではない。ただわたしが合わせる顔がもうないなと思っているだけだ。
たまらなく寂しいとき、その人のことをよく思い出す。いつでも笑って「大丈夫だよ」と言ってくれた。そうすると本当に大丈夫だという気分になったものだ。そのかけがえのない笑顔を思い出すと胸が苦しくなる。永遠に2度と会えない人がいるというのは寂しい。でも生きてるから、ひとまずはそれでいい。

こんな風な綺麗な空を、眺めていてくれたらな。そしてそこになにがしかの救いを感じ取ってくれますように。