そして毎日はつづいてく

I am always prepared to lie

包丁を買ったので傷つくことについて

貧乏だった。新婚当初のことだ。
当時夫は働いておらず(D)、わたしは新卒1年目だった。特段給与の高い会社でもない。手取り20万円いかない給与で横浜市の比較的都市部に近い地域で二人暮らし(と犬とインコ)をしようと思うとそこそこに苦しい。最寄駅から徒歩18分の物件で、家賃は8万円だった。3分の1に抑えろというのが普通だから、すでにそれでオーバーしている。
そういうわけでとにかくお金がなかった。

お金がないから休日は犬を連れて散歩ばかりした。1時間でも2時間でも歩いた。それは今思えばかけがえのない時間だったのかもしれない。一つ一つをいちいち覚えてはいないけれど、いろいろな話をしたはずだ。散歩の他はキャッチボールをした。お金がかからないからだ。川原でキャッチボールをするのは心地よかった。やっぱりそこでも様々な会話をしたのだろう。

そんな風にお金がなかったから、包丁も近所のダイクマで千円そこらのものを買った。それを9年使い続けてきたが、最近いよいよ研いでも切れ味が悪くなってきた。
そこで包丁を買うことにした。ヘンケルスの1万2千円のマルチパーパスナイフである(値引きされて7,800円)。なんという大出世。我が家の富の象徴となるだろう←

Zwilling ツインフィン マルチパーパスナイフ 30847-180

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包丁は使用を誤ると指なんかを傷つけてしまうものだけれど。
心は簡単に傷つくようでいてそれほどやわじゃない。わたしに傷をつけられるとすればそれは夫か主治医か仲良くしてくれている会社の先輩くらいなもので、それ以外の人に何かをされたところで不快に思うことはあってもきっと傷ついたりはしない。それは誰だってそうなんじゃないかな。本当に傷つくのなんて、全幅の信頼を置いている人から心ない仕打ちを受けたときくらいの話で。心はそんなに万人に開かれてはいないのだ。開かれていないものは、傷だってつかない。